平成23年8月

 この「スリットカメラ製作記」は、一般的な35mmフィルムカメラを改造してスリットカメラの実験を行ったり、実際に鉄道車両等を撮影することを計画している人のために、少しでもアドバイスになればと思い掲載したものです。
 ここで紹介する方法は、材料さえ揃えば特別な精密加工機械を使用しているわけでなく、ドリル、かな鋸、万力、やすり等を使用し、さらにエポキシ系の接着剤を使用することで比較的用意に製作することができる方法です。
そのためこの程度の工作では、カメラの修理や製作を専門にされている方から見れば失笑を買うかもしれませんが、この製作方法には私が独自に工夫した方法や試行錯誤の結果採用した方法についても掲載してありますので、この「スリットカメラ製作記」が少しでも皆様の参考になればと思います。


目  次 (以下の項目をクリックすることでご覧になれます)
1  改造するカメラについて
2  モーター
3  ギヤ
 ・平ギアが基本
 ・ウォームギヤの採用
 ・組み立て時の注意点
4  軸受け関係
5  フィルムを動かすための駆動方式
 ・フィルム巻き戻し方式
 ・ゴムローラーによる移動方式
 ・巻き取りドラム方式
 ・(フィルム装着の仕方)
 ・(フィルム巻き戻し機構)
6  コントローラ(モータ制御方式)
 
トランジスタ(ゲルマニュウムトランジスタ)制御
 ・ロータリースイッチによる段階的抵抗制御
 ・大型可変抵抗器(レオスタット)による制御
 ・サーミスタを利用した自動減速回路(補足)
 ・モーター起動時の回転速度について(参考)
7  シャッター開放とモーター回路スイッチとの連動
8  カメラを天地逆に取り付けるための台枠の製作
9  スリット
 ・スリットの素材
 ・スリットの幅
 ・スリットの装着方法
10  フィルムカウンターの役割
 ・歩数計を利用したフィルムカウンター
 ・フィルム終端の停止について
11  光線もれのチェックについて
12  電池
13  三脚
 ・一脚の使用
 ・水準器の使用
14  フィルム
 ・ネガフィルム
 ・リバーサルフィルム(ビュープリントの紹介)
 ・現像について



1 改造するカメラについて
 ・マニュアルの一眼レフカメラが最適だと思います。そこで、巻き上げレバーのない電動機種は対象外です。スリットカメラはオープンシャッターカメラとも言われるようにシャッターを開放状態にして撮影しますが、マニュアル一眼ではバルブ撮影ができるものが多いです。また、スリットカメラでの撮影ではファインダーを覗いて撮影する被写体の写る範囲をある程度正確に合わせることが必要ですが、一眼レフだとこの作業で範囲が合わせ易いです。
 昔から全てコニカの一眼レフカメラを使っていますが、これは手持ちレンズを使うために同じメーカーにしているもので、他のメーカーのカメラでもバルブ撮影が出来るマニュアル一眼であれば問題ありません。

 












 精密機械であるカメラを改造することは改造する部分によっては相当高度な技術を要すると思われますが、このスリットカメラの製作では、裏蓋をはずしカメラの脇にフィルムを巻き取る機構と撮影済みフィルムを格納するケースを取り付けるもので、前述のようにそれほど難しいものではありません。


2 モーター
・ラジコンなどに使用される小型モーターを使用
 適正電圧が6,7V程度のもので、このタイプ最大のマブチモーターのRS-540を使用しています。なお、ステッピングモーターはあまり向いていないようです。確かにステッピングモーターは、回転が正確というメリットがありますが、あまり高速回転に適さず、さらに画像にステッピングモーターゆえの縞模様が出ることが最大の問題です。


3 ギヤ
・平ギヤが基本
 個別に平ギヤを選ぶ場合、外形と歯数で求められるモジュール(歯の大きさの単位)が全く同じ歯車でなければなりません。もし少しでも歯型の大きさが違う歯車同士を使用するとトルクの伝達には支障がなくても、スリットカメラ特有の縞模様が発生する原因となります。市販品のギヤードモーターのようにモーターに付属するギヤボックスに減速ギアが組み込んであるものも使えます。ちなみに1号機はこのタイプを使用していました。平ギアを何枚も組み合わせてギアボックスを製作するより、ギヤードモータを使用したほうが工作がし易いと思います。
・ウォームギヤの採用
 ギヤードモーターで減速するモーターなら必要ありませんが、モーター単体で直接減速させる場合、何枚もの平ギヤを使わなければなりませんが、ウォームギヤを使うことで平ギアの使用枚数を大幅に減らすことができます。この点を利用して昔から鉄道模型にはウォームギヤが多く利用されてきました。さらにウォームギヤでは、ギヤ部分から発生するスリットカメラ特有の縞模様がないことも大きな利点として挙げられます。。
 今回製作した装置のギヤについて(東急ハンズで購入)S75B20B(平ギヤ)、S75B50B(平ギヤ)、ウォームギヤ(ウォーム(W80S R1+B))は金属製で、ウォームホイル(G80D 50+R1)は樹脂製です。価格等についてはこのページの最後を参照してください。

※この商品については、東急ハンズで在庫がないため、取り寄せになりました。
 ・組み立て時の注意点
 今回の製作ではギヤードモータは使用せず、ウォームギヤと大小の平ギヤを組み合わせて製作しました。それでは平ギヤを使用して工作する場合の注意点を挙げることにします。ギヤを取り付ける回転軸に関してですが、動力を伝達する回転軸同士は平行でなくてはなりません。回転軸に取り付けたギヤ同士を手で回してみて、スムーズに回転するか、回転むらがないかを調べます。ギヤ同士はお互いの歯を隙間なく付けるのでなくほんのちょっと遊びが必要です。
 また、遊びがありすぎても駄目で、ギヤを回したとき静かで抵抗が一番少ないように取り付けるのがポイントです。この取り付けがうまくいかないと画像に縞模様が出てくる原因の一つとなります。
 あとギヤばかりでなくモーターから、巻取りドラム、フィルムに至るまでそのスムーズな動きを邪魔する比較的大きなゴミや回転に伴う部品の部分的なこすれなどがあれば、結果的にその画像に縞模様となって現れますので注意が必要です。

 


4 軸受け関係
・小型ベアリングを使用
 軸受けにべリングが絶対必要というわけではないですが、抵抗の少ないスムーズな回転のためには必要だと思います。ベアリングは、内径が6mmのものを4個、軸には6mmの真鍮製丸棒を切断して使用しています。 


5 フィルムを動かすための駆動方式
・フィルム巻き戻し方式
 フィルムを全て巻き上げてから、巻き戻すときに撮影する方式です。カメラの改造が不要のため一番手っ取り早い方法ですが、比較的芯の細いパトローネの軸を中心に巻き取るため巻取り速度が安定しない欠点があります。1号機で採用したカメラ内部のフィルムの巻取り軸にギアを取り付け電動で巻く方式は、カメラの改造が必要ですが原理的にこの方式と同じ欠点があります。
・ゴムローラーによる移動方式
 2個のゴムローラーの間にフィルムを通し、ゴムローラーを回転させることでフィルムを動かす方式です。この方式の最大のメリットはフィルム移動速度が巻き始めから終わるまで等速な点です。ただ、仕組み作りが難しい上、高速回転時にフィルムが滑ったり、ローラーを通過した後のフィルムの処理が困難などいくつか解決出来なかったことで、この方式で4号機を製作して失敗した経験があります。
・巻き取りドラム方式
 フィルムの巻き取りスプールとは別にカメラの横に巻き取りドラムを格納した暗箱を設置し、そこに撮影したフィルムを巻き取るとともに撮影後のフィルムを格納する方式です。フィルム巻き戻し方式の欠点で述べたように、巻き取りドラムが細いとフィルムの巻き始めと巻き終わりの頃で巻き取り軸の径がフィルムの厚みで太くなるため巻き取り速度も自然と上昇してしまいますが、これをある程度防ぐには太いドラムが良いのですが、あまり太いと装置自体も大きくなるのでサイズを決めるにはその辺の兼ね合いが必要です。スリットカメラは今まで7号機まで製作していますが、6号機で直径36mm、7号機で42mmのドラムを使用しています。ちなみに5号機はもっと太く46mmでした。
(フィルムの装着の仕方) 

 フィルムは起動時モーターで強く引っ張られるため巻き取りドラムに確実に装着しないと外れてしまします。そこで巻き取りドラム内にぜんまい動力に使われる1m位のはがねの板を巻いて挿入し、巻き取り軸の一部にスリット状の切れ込みを入れて、そこにフィルムの先端を折ってを装着する方法を採用しています。この方法だとフィルムの先端は、ぜんまいの鋼板と巻き取りドラムの内側の壁に挟まれて抜けません。フィルムを装着する都度に先端を内側に3mm程度折り曲げて挿入するため、挿入するとき少し力がいりますが、今まで外れたことがありません。また、巻き取りドラム内に巻いたはがねを入れることで巻き取りドラムのおもりの役にもなります。巻き取りドラム自体を重くすることで、フィルム速度が一定の速度に立ち上がるまで時間が長くなりますが、反面、慣性の利用によりフィルム速度の安定にもつながります。

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機と







(フィルム巻き戻し機構)

 巻き取りドラムをつけた場合、撮影が終わってフィルムをパトローネに巻き戻さなければなりませんが、巻き取り軸からモーターまでギアでつながっているので、モーターを逆回転させない限りフィルムは戻りません。そこで5号機からギアの一部をスライドさせてギアの噛み合わせを外すことで、巻き取りドラムが空転するようにして、通常の方法でフィルムの巻き戻しが行えるようにしました。(図1、2参照)
 1号機ではモーターを逆転させながらフィルムの巻き戻しを手動で行っていましたが、フィルムを詰まらせたりしたのでモーターを動かさない方法に変更しました。


6 コントローラ(モータ制御方式)
  モーター回転速度を制御することで、フィルム移動速度をコントロールするための装置で、スリットカメラの撮影の成否を左右するものといっても過言ではありませんが、実際にモーターをコントロールする方式としていくつか考えられます。

・トランジスタ(ゲルマニュウムトランジスタ)制御
 昔から鉄道模型で採用されているトランジスタコントローラーによる方式で、以前からこの方式を採用しています。ただし、コンデンサと抵抗の組み合わせによる充放電曲線を利用した模型の電車の加減速制御と異なり、スリットカメラのコントローラーにはタイムラグのないスムーズな制御が望まれます。また、いろいろ実験した結果、シリコントランジスタよりも上の写真のようなゲルマニュウムトランジスタのほうが熱に弱く効率は悪いのですが、モーターの起動がより早くなるため採用しました。ただし、ゲルマニュウムトランジスタはもう生産されていませんので、オークションなどで手に入れました。










 この装置は、電源の安定化を図るため秋葉原の秋月電子で購入した5Aの3端子レギュレータ(LM338T)を使用した安定化電源を使用しています。入力は単三電池16本で24V、出力は12Vに固定していますが、この電源装置の効果は定かではありません。ただ、撮影時には列車が見えた時点で事前にこの電源のスイッチを投入しておいてから撮影列車を待つ感じで、モーター起動や立ち上がりの遅れが少ないようにしています。下の図3がこの方式の概略図で、上の写真が5号機専用のコントローラーです。

・ロータリースイッチによる段階的抵抗制御
  ロータリースイッチを使って抵抗値の低いカーボン抵抗をそれぞれ切り替えて接続することでモーター速度を段階的にコントロールするものですが、この6号機の製作中に試した方法ですが、製作はしましたが最終的に採用しませんでした。また、カーボン抵抗の発熱により速度の低下の割合を見てみましたが、起動後10秒近くで相当な発熱によりモーター速度が急速に落ち込む現象は確認しましたが、半導体ではないので焼ける直前まで抵抗値がモーター速度に与える影響はほとんどないようです。

・大型可変抵抗器(レオスタット)による制御
 その昔、鉄道模型でもよく使われていたレオスタットと呼ばれた大型の可変抵抗器を使った方法ですが、トランジスタ、やコンデンサ類を使用しないため回路が簡単なのとモーターの起動時の立ち上がりが良いのが利点です。

・サーミスタを利用した自動減速回路(補足)
 巻き取りドラム方式の特長は、フィルムを巻き取るドラムの径を大きくすることで、フィルムの移動速度を極力一定に保つことですが、ドラムの径をある程度大きくしても36枚撮りフィルムでは後半の巻き取り速度が漸増することが避けられませんでした。そこで、素子の温度が上昇することで自らの抵抗値を下げるサーミスタの特性を利用して、トランジスタ制御に組み込んでモーターの回転数を自動的に落とす装置を作りました。下の写真が6号機と7号機用のモーターコントローラで、サーミスタによる自動減速装置が組み込んであります。
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 図3のコントローラーの回路図は5号機及び6,7号機用の共通の概略図ですが、以下の点で6,7号機用は異なっています。それはモーターと並列に接続されたカーボン抵抗を発熱させることで抵抗に接触しているサーミスタに熱が伝わりモーター起動後数秒後に次第に回転数を落とす仕組みがついていることです。カーボン抵抗とサーミスタはアルミフォイルで一緒に包み、アルミフォイルの中にCPU冷却用銀入りグリスを注入しエポキシ樹脂で全体を固めてあります。もう一方のサーミスタは直列接続による温度変化補償用で、発熱用に使用している抵抗値は10オーム1/2W程度、サーミスタは5キロオーム程度ですが、使用するモーターや回路により一概に決めることはできません。なお、平成24年3月より5号機のカメラについても接続コネクタを取り替えることで、このコントローラーを使えるようにしました。 










 下のグラフはサーミスタを利用した自動減速装置の効き具合を表した一例です。列車は札幌発のEH500の牽引するコンテナ列車で、編成は21両分ありそれをX軸にとっています。Yj軸にはフィルム上の1両分の長さをmm単位で表したものです。右に行くほど2つのグラフが乖離していく様子がわかると思います。常にこのようにうまくいくわけではないと思いますが、10両編成以上の列車では効果があると思います。反面、10両に満たない編成で使用すると、減速効果のため速度の遅い列車だと編成の後半が縮むことがあります。
・モーター起動時の回転速度について(参考)
 スリットカメラで撮影するときはあらかじめフィルムを事前に少し巻き上げておきます。一般のフィルムカメラで撮影する前に2、3コマシャッターを空で切ることがあり、これはフィルムの感光部分を避けるための措置ですが、スリットカメラでも同様で、モーターでフィルムを感光部分を避けるため巻き上げます。しかしスリットカメラでは更にシャッターを切るタイミングについても考えなければなりません。下の写真にあるように右端がスリット部分で、フィルムは左から右に向かって動きますが、モーターは起動して一定の時間が経つまでは速度が安定しません。この写真ではスリット部分でモーターが起動していますが、左に向かうほど次第に速度をあげていく様子が示されています。つまりこの写真からは1.5コマから2コマの間で100の速度に達していることがわかります。ということはスリットカメラのシャッターをきるタイミングは、列車の先頭部分が通過する前にコンテナ貨車1両分20m手前でシャッターを切れば十分ということがわかります。逆にそれよりも短い距離でシャッターを切ると、先頭部分がこの写真の右側寄りの画像のように縮んで写ることになります。


7 シャッター開放とモーター回路スイッチとの連動
 スリットカメラで撮影する場合、オープンシャッターカメラのため撮影の直前にシャッターを全開にして、撮影後すぐシャッターを閉じなければなりません。そこで1号機の場合はレンズキャップを使って撮影時にはずしたり、また撮影後つけたりしていたのですが、キャップをしないまま巻き戻したり、キャップをつけたまま撮影したり、失敗が絶えませんでした。
 そこでもっとスマートに撮影するためにモーターの起動と連動してシャッターの開閉を行うようにしました。ストロボを使用するカメラではストロボ接続用のシンクロ接点がついていますので、それを利用してシャッターボタンを押したときストロボ接点がオンとなり小型リレーを駆動してモーターの回路をオンにする方法をとっています。上の図3の9V電池とリレーの回路がそれを表しています。また、シャッターにはレリーズを装着しシャッターを1度押すとシャッターが戻らない構造のレリーズを使っています。撮影対象の列車が通過した直後にレリーズのレバーを素早く戻すことでシャッターが閉まり、同時にモーターも停止するようになっています。


8 カメラを天地逆に取り付けるための台枠の製作


 35mmフィルムを使用したスリットカメラでは、フィルムを動かす方向を撮影する列車の方向によって変えなければなりません。
通常向かって右から左に通過する列車であれば、カメラはそのまま三脚につければよいのですが、左から右に向かって通過する列車を撮影する場合、カメラを天地逆に取り付けなければなりません。このためカメラを逆さに取り付けるための台枠を製作し、その台枠に三脚に取り付けるときのメスネジも取り付けなければなりません。
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 台枠を作るときの注意点としては、フィルム巻き上げ用レバー、巻き戻しレバー、シャッターに装着するレリーズがそれぞれ確実に動作できるように作ることです。
 たとえば、シャッターを巻き上げるときにレバーが台枠に引っかかったりしたのでは失敗です。
 台枠とカメラ本体は最後に接着剤で固定していますが、接着剤だけだと弱いので、カメラ本体と台枠を一部ネジで固定しています。


9 スリット
・スリットの素材
 カメラの裏蓋を開けてフォーカルプレーンシャッター幕の後ろにスリットを取り付けるのですが、スリットを直接取り付けるのではなく先に厚紙を幅の広いスリット状に張って、その上から本来のスリットを張るようにしています。つまり2段式となりますが、本来のスリットは感光した現像後の不透明のフィルムを素材にして作ります。フィルムの厚さは0.1〜0.2mm程度でカッター等で綺麗な断面に切ることで紙のような毛羽立ちがありません。安全かみそりの刃をスリットにするということを聞いたことがありますが、1mm程度のスリットであればフィルムで十分なようです。
・スリットの幅
 スリットの幅が狭いほど実質的なシャッター速度が高まり、より鮮明な画像となりますが、反面スリットの幅を1mmより狭くしていくと私の製作したカメラでは光の干渉によるものなのかよくわかりませんが、スリットカメラ特有の縦縞模様が顕著に現れてしまいました。実際、着順判定カメラでは1/100mmとか非常に狭いスリットが使われているようですが、鉄道撮影用のスリットカメラでは着順判定を行うわけではないので、そのようなスリットは不要だと思います。 
・スリットの装着方法
 スリットは一度装着すればつけたままなので、フィルムの動きでずれることのない様に厚紙に接着剤で固定します。このときスリットの隙間がフィルムの上下間で正しく1mmになっていることや平面性のチェックも行います。上の写真では貼付したフィルムの両端が丸まってしまいましたので、貼り直しました。また、フィルムが通過するときに凸凹してこすれる部分がないかも確認します。


10 フィルムカウンターの役割
 スリットカメラで撮影して現像する前に、撮影結果についての成否を判断するため、撮影後にフィルムの使用枚数を把握することが不可欠です。撮影の成否を事前に把握することで、無駄な現像料の出費を抑えることができます。
・歩数計を利用したフィルムカウンター
 5号機では当初ロータリーリレーを使ってフィルム巻き取りドラムに磁石を取り付け、フィルムを格納するケースの内側にリードスイッチを取り付け、ドラムが1回転するたびにリードスイッチを働かせてロータリーリレーを動かしていました。ただこの方法だとフィルムの枚数にして約4コマ毎のカウントとなるので、より正確なコマ数の把握が必要になりました。 そこでウォ−ムギアに連動する平ギアに磁石を取り付け、平ギアの回転に合わせて、平ギアに近接させたリードスイッチで回転数を計測する方法をとりました。このリードスイッチには歩数計についていたものを利用し、歩数計もカメラの脇に取り付けることでカウンターとして使っています。この方法によりフィルムの移動量を大体コマ単位で把握することができるようになりました。
 これに対して6号機では大小の平ギアを組み合わせて平ギアの表面にフィルム枚数を表示させることで、フィルムカウンターにしております。この方法は正確ではありますが、作者の場合には数字が小さすぎて読みにくため、その後6号機は使っておりません。
 7号機については上記の理由から5号機と同じ歩数計によるカウンターをつけてあります。
・フィルム終端停止について
 1号機でも5号機でもフィルムが終端に達する寸前でモーターの回転を停止するための仕組みがありました。1号機では円盤状のフィルムカウンターに電気接点をつけ、リレーを働かせることでモーターを停止させていましたし、5号機ではロータリーリレーでカウントして4コマ単位で最大40枚までで停止できるようにしていました。そもそもこの仕組みをつけることを考えたのは、フィルム終端でモーターが停止しないためにモーター等に負担をかけたりしないためですが、最も必要性を感じたのは、フィルム終端で巻き取りドラムが強制的にフィルムで引っ張られることを繰り返すことで、巻き取り軸と巻き取りドラムの接合にゆるみが生じて巻き取りドラムが次第に空回りする現象が生じたからです。しかし、6号機や7号機ではフィルムカウンターを付けただけで、フィルムを停止させる仕組みはつけておりません。これは6号機や7号機では巻き取り軸に細い穴を開け、ドラムと軸を確実に固定することで緩まない構造に変更したことによるものです。


11 光線もれのチェックについて
 カメラを自作する場合、カメラ内部への光線の侵入を防ぐボディを作ることはなかなか困難です。改造するカメラの本体は遮光が完全であっても、その脇につけるケースとカメラ本体の接合部分で光線漏れが問題となります。また、フィルムカメラの場合、現像するまで光線もれの有無をチェックできないのも困難な理由です。私の場合は、豆電球を裏蓋に空けた穴から配線して、暗室の中で光らせて光線漏れの場所を見つけていましたが、直射日光の下で比較的長時間カメラを置くことで、豆電球の方法では発見できない光線漏れもありました。また、6号機では製作中に3回、撮影中に1回、移動中に1回と合計5回もカメラの落下事故を起こしてしまい、何度も修理したためカメラ本体が最初に製作した頃にくらべ遮光性が悪くなってしまいました。


12 電池
 電池はスリットカメラのモーター駆動用に単3電池、シャッターと連動してモーター回路の開閉を行うリレー駆動用に006Pの9Vの乾電池を使っております。単3電池はアルカリ乾電池ですが、以前は高性能のパワーのあるアルカリ乾電池を使っていましたが、雨水が進入して発熱して火災になりかけたことから、現在はパワーが低めで比較的廉価なものを使っております。なお、四角い9Vの電池はコントローラー内に入っています。


13 三脚
 スリットカメラは手持ちで撮影するものではありません。撮影中フィルムを動かすことから、撮影中いかにカメラを安定的に保つかが課題となり、三脚の使用が不可欠です。三脚があっても設置する足場が悪いと意味がありません。100tを越える重量級の機関車が高速で通過するときは、場所によっては足の裏で地面が振動するのを感じるぐらいですから、しっかりとした三脚が必要です。 
・1脚の使用
 スリットカメラでは 135mm望遠レンズや長めのズームレンズを使用します。三脚にカメラをしっかり固定しても三脚のゆれで長いレンズの先端がゆれることがあります。この状態で撮影すると画像が波打ったりゆがんだりします。そこで私の場合は三脚にもう1脚足して撮影しています。三脚の2本の脚に保持金具を取り付けその中央にネジで1脚を垂直につけられるようにして、1脚の先端は望遠レンズを挟むリング状の金具を取り付け、さらにその先端を固定するため洗濯バサミやダブルクリップで留めています。1脚を使用する場合に気をつけなくてはならない点は、1脚の根元が地面にしっかり固定されていることが必要で、もし地面から少しでも浮いているとレンズを揺らすことになりかねません。








・水準器の使用
 使用している三脚にも水準器がついていますが、それとは別に携帯用の水準器を使用しています。以前は水準器が不可欠でしたが、最近ではもしカメラが水平でなくても、パソコンのソフトである程度修正できるので、以前ほど厳密には水平度を計らなくなりました。


14 フィルム
 このスリットカメラは昔からフィルムカメラを使っているのでフィルム(カラネガーフィルム)を多量に使用します。長編成の列車だと36枚撮りが10秒余りで撮影されてしまうので、撮影に行くときは10本程度もっていきます。事前に使用済みフィルムで試し撮りを行いますが、初めて撮影する場所だと成功率が低いです。
・ネガフィルム
 街のミニラボで30分前後で現像してくれますので、専らこのカラーネガフィルムを使っています。感度はISO400が多いです。フィルムも大きなカメラ屋で10本、20本入りの箱単位で購入することが多くなりました。
・リバーサルフィルム
 昔、雑誌などの出版物に掲載するため使用していましたが、露出のラチチュードが狭いので撮影は難しいです。また、街のミニラボだと自家処理できないので、現像するのに1週間程度かかる場合があり、気安く利用できません。
 以前にはフジフィルムのショップでリバーサルカラーフィルムで同時プリントを条件にビュープリントという上下にパーフォレーションも写ったロール紙のプリントを注文することが出来ました。このビュープリントを利用してスリットカメラで撮影した写真の作品を製作されていた方もいらっしゃるようですが、このサービスは既に終了しています。
・現像
 昔はモノクロフィルムについては現像、印画紙への引き伸ばしを自分で行っていましたが、カラーネガフィルムを多用するようになってからは現像のみ街のミニラボに依頼しています。ただ店頭で申し込むときは6コマごとのフィルム切断を懸念して「現像のみで長巻でお願いします。」ということで頼んでいます。街のミニラボもかなり少なくなってしまいましたので、いつまで出来るか気がかりです。


              部 品 等 の 明 細 表

・中古マニュアル一眼レフカメラ ?円(オークションやカメラのイベントで購入)
・RS-540SHマブチモーター 1200円
・ウオームギヤ 鋼製ウオームと樹脂製ホイール(50枚) 2400円
・平ギヤ S75B30B 683円
・平ギヤ S75B50B 1334円
・ベアリング 696ZZ 5個 378円/個(内径6mm)
・接着剤 5分硬化形84gセット 984円
・径6mm 1m 真鍮丸棒 560円
・直径40〜50mmの鋼製円筒 小型モーターのケース利用
・アルミ板 1〜2.5mm肉厚数枚