スリットカメラ撮影時の失敗例

 最近のカメラは、カメラを被写体に向けてシャッタ−を押すだけで誰でも失敗のない写真が取れるのが当たり前になっています。このように電子化されたカメラでは昔に比べ失敗することは大分少なくなっていますが、一般的にカメラの失敗例としては露光過不足、ピンぼけ、カメラのぶれなどが考えられます。
 ところがスリットカメラではそれ以外にスリットカメラ特有とも言うべき以下のような失敗があります。
1 列車速度に対応したフィルム移動速度の不一致
 スリットカメラの撮影で撮影の成否を決める最も基本的な要因であり、フィルム移動速度が速すぎても遅すぎても駄目なので、どのようにしたら適正速度で撮影できるかが難かしくまた面白い点です。
2 撮影タイミングの遅れによる先頭部が写らない現象
 この失敗だけは撮影に慣れたつもりでも何度でも繰り返してしまいます。撮影を開始するタイミングをあまり早めにするとフィルムの最初の部分の無駄が多くなるばかりでなく、長編成の列車だと最後尾まで撮影できない恐れがあります。そこでぎりぎりまで待って撮影を開始するのですが、ちょっと遅れると列車の先頭部が写らないという致命的ともいえるミスにつながります。
 また、現在使っている5号機では、巻取りドラムが一定速度に達するまで1秒以上要するためこのことを踏まえて撮影タイミングを決めなければなりません。
3 撮影列車の進行方向を錯誤して撮影
 同一場所で何度も撮影するときは間違えることはないのですが、新しく製作したカメラを試写するときなどにわかっているつもりが、ついカメラを天地逆に取り付けて撮影し、現像したフィルムで結果を見るまで気づかないことがありました。
4 上下の撮影範囲を間違える失敗
 スリットカメラに改造した一眼レフのファインダーを見ながら、上は架線の一部、下はレールや道床の一部が入るようにカメラの向きを調整するのですが、何本も平行して線路があるところでは間違えてとなりの線路や架線に合わせてしまうことがあります。その場合は、列車の上下の一部が写らないことなどから失敗したことがわかります。
5 線路脇の障害物による失敗
 スリットカメラでは、スリットという細い隙間しか画像が映らないわけですが、逆にこの狭い隙間に一部でも余計なもの(たとえば線路脇の背の高い草など)が写り込むと列車の下部にたくさんの横方向の線が写ってしまうことになります。
6 カメラの揺れ等による波打現象
 スリットカメラは三脚に取り付けて撮影するのですが、三脚を設置する場所の足場が悪かったりして三脚がしっかりと固定されていないと列車の通過によりカメラが揺れることで画像が波打ったりすることがあります。また、カメラがちゃんと固定されていても列車を撮影する場所がカーブしていると列車の車体が上下に動くことで同様に波を打ったような画像になることがあります。
7 カメラを水平に取り付けなかったことによる画像の傾き
 三脚にスリットカメラを取り付けるとき、取り付ける部分が完全に水平になっていなければなりません。これが少しでも傾いていると車両のドアや窓がすべて傾いて写ってしまいます。
8 ギアのかみ合わせ不良による縦縞模様の発生現象
 自作のスリットカメラでは、フィルムは円筒状のものに巻き取ることにより撮影するわけですが、この円筒を回転させるためにモーターの回転を何枚ものギアによって回転数を落としながら伝えています。そこでこの回転を伝えるギアの噛み合わせがうまくないとフィルムの動きにも反映されて不規則な縦縞模様等が出ることがあります。
9 スリット部の不具合
 スリットカメラのスリット部分の幅は、狭くするとシャッター速度が高くなり、広くするとシャッター速度が下がるという関係にあります。つまり1mmのスリット幅でフィルムを毎秒100mmで動かすとシャッター速度は1/100となります。しかしシャター速度を上げるためにスリットをかなり狭くすると光の干渉によるものか詳しいことはわかりませんが、フィルムに強い縦縞模様が発生することがあります。
10 巻き戻し時にシャッター開放によるフィルムの感光
 スリットカメラはオープンシャッターカメラとも呼ばれ、撮影中にはシャッターを全開B(バルブ)にしていなければなりません。このため撮影が終わってフィルムを巻き戻すときなどにシャッターを元に戻さないで全開のまま巻き戻すと、フィルムを感光させてしまうことがあります。
 このようにスリットカメラの撮影は、掲載してある撮影作品ではわからないかもしれませんが、満足のいく成功例はわずかで残りは失敗フィルムの山です。
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