ここでは、165系急行電車「日光号」の自動スクロール画像において、隣の線路を逆方向に通過した客車列車を牽引する先頭の電気機関車が「日光号」の背後に写っていなかった理由について、ご説明します。なお、この撮影に関しては、機関車が電気機関車でなくパンタグラフのないディーゼル機関車とか、フォットレタッチソフトを使って機関車の形跡を消してしまったとかいうことはありませんので念のため申し添えます。
 まず正しい通常のやり方で撮影する場合について、以下の図と説明文をお読みください。この図では機関車ではありませんが、電車でも原理は同じです。
 スリットカメラで撮影するときは、列車の進行方向とフィルムを巻取る方向が逆でなければなりません。
 レンズを通過して写る像はフィルム面では逆さになるためこのような関係になります。
 ここでフィルムの移動速度を列車の速度にうまく対応させて動かせばフィルム上には列車の鮮明な画像が写ることになります。
 このように通常スリットカメラではフィルム移動方向によって正常に撮影できる列車の方向が限定されるという特徴があります。 


 次に、スリットカメラの位置を動かさないで、もし撮影する列車の方向とは逆の方向の列車を撮影すると、下の図のような写り方になります。
 スリット部分で列車の画像の動きとフィルムの動きがまったく逆方向になるため、列車の画像の方向が180度反転してフィルムに記録されます。その結果、列車は見た目とは逆の方向の画像として写るのです。
前の図とは反対方向から来た列車を撮影したはずなのに、結果はブレてはいても、前と同じ方向の列車が写るのです。
つまり急行日光号の背後を通過した機関車の画像は、左寄りに画面からはみ出して写っていることになります。なお、撮影時の画像がブレるのは、このスリットカメラ特有のもので、この問題とは無関係です。

  自動スクロール写真として撮影した画像のうち反対方向に通過列車が撮影されていた例はいくつかありましたが、その列車が電車の場合、編成が左右対称のためかあまり目立ちませんでした。今回、客車列車の画像例をアップしたことから、この際「写らない機関車」の話題として取り上げることとしました。読者の皆さんはこの説明でおわかりになりましたか。更に理解を深めるために以下の写真を用意しました。



 今までは、フィルムを左から右に移動させる例で説明しましたが、反対にフィルムを右から左に移動させる例の場合でも同じことが言えます。下の2枚の写真は同一の列車を日を変えて撮影したものです。1枚目の写真は、フィルムを右から左に移動して、左から右へ通過するEF58形電気機関車を撮影したものですが、列車とフィルムの移動方向が逆のため、これは正常に撮影されています。
 これに対して左から右に走行する同じ機関車を、フィルムを左から右に移動して撮影すると、前の例と同様に列車の進行方向が逆になって写ります。