山手線に限らず以前から電車に乗っているときは、外を眺めながらスリットカメラ撮影するのに
適当な所はないものか常日頃探しているのですが、最近になって新大久保駅近くの線路脇に良い
場所を見つけたので、本当に撮影が可能か、実際その場所に行ってみました。
 その場所が下の写真1と2で、「しんおおくぼそよかぜ橋」という橋のたもとがその撮影場所です。
写真1の手前から順に西武新宿線上り、西武新宿線下り、埼京線上り、埼京線下り、山手線内回り、
山手線外回りの合計6本の線路があります。(埼京線はここでは山手貨物線を走っています。)

 これだけ線路があっても撮影が可能なのは、山手線内回りだけです。とういのも西武線は近すぎ

て撮影には向きませんし、埼京線は西武線の起電線が邪魔してパンタグラフが写らないので、
結局、現場に行って山手線(それも内回り)しか撮影できないこと が分かりました。
 写真2は山手線内回りに乗車して車内から撮影現場を撮影したものです。写真からは分りにくい
かもしれませんが、西武線と埼京線の間には1m程度の高さの金属製の柵がありこの柵が鉄橋の
部分で途切れているので、この途切れた鉄橋の部分にカメラを向け撮影することとしました。
 このようにスリットカメラの撮影では、一般の撮影と異なり撮影する上で障害物となるものが以外
に多く、適当な撮影場所を探すのに苦労しております。また、この撮影場所は、その後も何度も利用
しております。

 
写真1 撮影場所から山手線内回り電車を撮影 写真2 山手線内回り電車から撮影現場を撮影
撮影現場 撮影現場(山手線車内より)

 また、この撮影場所のように撮影する線路の手前にいくつもの線路が通っているときは、予期せずに

撮影中別の列車が入り込んできてしまい、撮影に失敗することがあります。撮影する場所が左右に見
通しの良い場所であれば、このような失敗を事前に避けることもできますが、この場所では高田馬場
方面の見通しが利かないため撮影の最中、西武線や埼京線の電車が入り込んできたことがあります。
 平成13年12月からは湘南新宿ラインが開通したことで埼京線を通過する電車が増えたこともあ
り、山手線がより写しずらくなりました。

 さて、ここで実際に現場に到着して撮影するまでの手順についてご説明しましょう。

 撮影現場に着いて撮影を始めるためには、まずカメラを設置する場所を考えなくてはなりません。

 前に述べた撮影に適した場所でも、スリットカメラは手で持って撮影はでませんので、必ず三脚を
立ててカメラを固定しなければなりません。三脚を立てる場所は足場が良く安定していて、また、
路に面した所では通行の邪魔にならないような場所を選ばなくてはなりません。三脚を立てたら三脚
の足がぐらつかないことを認するとともに、カメラを設置する前に三脚の雲台が水平であることを水
準器を使って確認します。この確認を怠ると撮影した電車のドアの継ぎ目などがすべて傾いて写っ
てしまいます。
 ここで撮影していて、何度目かで気がついたのですが三脚の雲台は水平に設置したのですが、
山手線の線路自体が、わずかですが上り勾配であったのです。撮影した結果を見て、カメラを水平

に固定したのに電車がわずか傾いているのが分かり、その後、対策としてカメラをわざと傾けること

で解決しました。
 カメラを三脚に固定し、ズームレンズを取り付けたらファインダーを覗いて、通過する列車を見な
がら、電車のパンタグラフから道床まで撮影範囲に入っていることを確認します。

 このとき注意しなければならないのが、この場所のように複数の線路が交錯している場所では、

撮影対象となる線路や架線を隣と間違えて撮影範囲を設定しがちなことです。
 また、望遠レンズのためピントをしっかり合わせなければならないのですが、被写体である電車は
通過してしまうことから電車でピントを合わせることはできないので、線路や電柱を使ってピントを合
わせます。
 撮影するときの天候についてですが、必ずしも晴天である必要はありません。余り日差しが強いと
架線などが車体に影となって写るため、スリット写真ではいくつもの線になって写ってしまうからです。
 また、日差しが強いと乗客がカーテンを引いてしまい、車内が全く分からない写真となるのでよく
ありません。

 次にモーター、コントローラー等の配線をケーブルで結びます。カメラの裏ブタを開けてフィルム

をセットします。フィルムセット後、撮影に入る前にフィルムを2コマ程度進めて感光部を少し巻き取
ります。ここまで用意ができたら、後は電車が来るのを待つことになります。
 電車がきたら、先ほど撮影範囲を設定した場所に来る直前にシャッターを全開にしてフィルムを
巻くためにスイッチを入れなければなりません。このスリットカメラの場合、シッターボタンを押すと
同時にモーターが回転を始めるように作られていますので、あくまでシャッターを押すタイミングだ
が問題となります。このタイミングが遅いと電車の先頭部が撮影する前に通り過ぎてしまい、電車
の先頭部が写らないことになります。
 また、あまりタイミングが速いと、無駄にフィルムを送ることで長編成の電車の後ろの部分が写らな
いことにもなります。
 フィルムを送る速度ですが、実際に山手線に乗って撮影現場でどのくらいの速度が出ているか何
度か運転室の速度計をみて把握しました。この運転速度とズームレンズによる撮影距離、レンズの
焦点距離を勘案して大体10cm/秒という数字を算出し撮影することにしました。
 実際撮影してみて車輌の速度のばらつきや途中で加減速がおこなわれるなど思うように行かない
こともありましたが、さすが天下の山手線その数の多さでカバーできた感じです。

平成13年12月