写 真 の 解 説

 前ページの写真(一番上の写真と同じ)は、遠くに205系の山手線の車両が手前に西武鉄道の新鋭通勤電車20000系の先頭部分が写っています。これは何の変哲もない写真に見えますが、これが左右に延々と画像が続いているスリットカメラで撮影したものである場合、大変まれなケースであると言えます。なぜならスリットカメラで撮影すると、通常の場合、その下の写真のように手前の車両は形もはっきりしないほどブレて写るものだからです。つまりスリットカメラでは近くの列車も遠くの列車も同時に鮮明に撮影できることなどほとんどありません。

 上の図は写真の撮影現場の簡単な見取り図です。カメラの位置からは6本の線路が見えます撮影する電車は左から2本目の山手線内回り(★印)の電車です。スリットカメラの撮影はその内回りの線路に画角及びピントを合わせフィルム速度も電車の速度に合わせるよう設定します。山手線内回りの線路の手前には4本の線路があり、もし撮影中このいずれかの線路に電車が通過すれば山手線の撮影はできなくなります。つまり今回の例は、山手線の撮影中に西武新宿線の電車が入り込んできたとき撮影されたものです。

 ではなぜ距離の離れた両方の列車が同時鮮明に撮影されたかをおおまかな数字ですが計算しながらご説明します。山手線内回りの線路までは約30mあり、焦点距離135mmレンズで撮影し電車の速度も20m/秒(時速72km)あったとします。レンズの焦点距離は共通ですので西武新宿線の手前の線路まで約9mあったとすると逆算して西武の電車は6m/秒(時速21km)となります。つまり西武の新鋭電車20000系はのろのろ運転でカメラの前を滑り込んできたということです。山手線と同じような速度で通過する場合は、上の写真のようにひどくブレた画像になって写るわけです。

 何の変哲のない写真に無理やり難しい説明をつけてしまった感じがなきにしもあらずですが、実はこのとき本来の目的は新型の山手線を撮影に行ったのです。しかし、狙った内回りには当日1編成しか走っておらず一回見逃してから1時間待って撮影したのですが結果は失敗でした。試験的に事前にカラ写しをして速度が大体合っていると思っていたのですが、いざ新型が来ると先行の列車との距離が近かったからか少し減速気味で速度が合いませんでした。そこで今回は申し訳ありませんが、先頭部分だけの写真をアップしておきます。